感覚が鋭い人ほど現実世界に飽きたらず、インナー・スペースの深遠に旅立つものだ。心の淵に這わせたアンテナはしだいに根を伸ばし、自分だけの幻想を花開かせる。映画のサントラを数多く書き下ろしながらも、相変わらずな主張の強さと色褪せない情熱が眩しいTHE BACK HORNのアルバム4作目。(3)や(5)などのシングル曲では、情景を描き出すことに慣れた鮮やかな展開が目立つが、歌謡曲譲りの劇的なメロや熱っぽい言葉でいかに想像をかきたてようとも、彼らの骨格を成すグランジ顔負けの重低音が殺伐とした空気を震わせながら圧し掛かり、生ぬるい幻想に浸ることを許さない。お気に入りの音楽を流せば、瞬時にマイ・ワールドへ飛び込めるヘッドフォン。しかし、がっちりと頭に装着したそれは他人への拒絶のしるしでもある。皮肉にも自分たちの作るものがそこから流れていることに気づいたTHE BACK HORNの迷いのないこの音が、現実や幻想という枠組みを超えて個の保ち方を教えてくれる。